Origami doctor's diary

歯科麻酔学会認定医試験勉強のアウトプット用ブログです。参考とした教科書や参考書、関係のない読書本も紹介します。

局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド

第42回日本歯科麻酔学会認定医試験問題

その2

46.局所麻酔薬の合併症について正しいのはどれか.2つ選べ.
a. 局所麻酔薬中毒では脂肪乳剤の使用を考慮する.
b. 局所麻酔薬は単独でアレルギーの原因になりうる.
c. リドカインの血中濃度5μg/mlで呼吸停止の危険性がある.
d. Ⅰ型及びⅣ型アレルギー共にエステル型で発生率が高い.
e. アミド型の代謝産物である4-ヒドロキシ-2,6-キリジンはアレルゲンとなりうる.

 

a. "脂肪乳剤"はどこかで見た記憶あるが‥

c. 5μg/mlはまだ大丈夫,10~15μg/mlで意識消失

d. これは正解

e. プロピトカインの代謝産物PABAがメチルパラベンと似ておりアレルゲンに

b. プロピトカインOK?

 

としてb,dとした。

教科書PDF単語検索でも脂肪乳剤引っかからないし‥

と思っていたら,

日本麻酔学会2017.6制定の局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイドに載っていた.

6月制定で8月の試験に出題しているということは,急遽問題として組み込んだ可能性が高い.よくよく見てみると選択肢のa以外はアレルギーに関するもので,元々はaにアレルギー関連の選択肢があって,問題もアレルギーについてではなかったのか.それを無理やり組み込むために問題を合併症として,aに選択肢追加‥

 

という流れなら,もう昨年問題として出してるから,みんな目を通しているよね?問題もう少し踏み込みますよ,という問題が出題される可能性高い.

 

ので,局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイドについて

 

・局所麻酔薬中毒の頻度:約1/10,000~1/500と広い幅

・局麻薬は血漿中でα1-糖蛋白やアルブミンと結合しており,薬理学的活性を持つのは,細胞膜を通過するタンパク非結合分画のみ.局麻薬の種類によりタンパク結合率に差があるが,短時間作用型に比べ長時間作用型はタンパク結合率が高い.多量の投与により血中濃度が上昇した場合,特に長時間作用型でタンパク非結合型の割合が急激に増加し,中毒症状が出現しやすい.

長時間作用型の方が,局麻中毒起こしやすい.

補足:プロピトカインはタンパク結合率55%と小さく,クリアランスも大きい=短時間作用型

脂溶性の置換ベンゼン環と水溶性のアミン基を有す.局麻薬はほとんどが弱塩基であり水溶性に乏しい.溶液中で塩基型とイオン型に分かれるが,神経細胞膜を通過するのは塩基型.生体pHがアシドーシスになってるとイオン型が増加するため,神経細胞膜は通過しにくくなるが,タンパク結合率が低下し中毒症状が出現しやすくなる.

代謝アミド型は肝のミクロソームで,エステル型は血漿コリンエステラーゼ代謝される.

乳児は年長児や成人に比べ,肝臓の代謝酵素活性が弱いため,中毒を起こしやすい.

・少量分割投与.3-5mLずつ分割投与し,投与ごとにしばらく時間をおいて観察.

・発症リスクの少ない薬剤を使用:ラセミ混合物のブピバカインよりも,S-異性体ロピバカインレボブピバカインを使用する.

・中枢神経系への作用は,初期には大脳皮質の抑制系の遮断に伴う刺激症状から生じる.

・心電図上PR延長QRS増幅

・発症までの時間は,半数が50秒以内.3/4の症例で5分以内.即時型は頸動脈や椎骨動脈への誤注で生じる.

・先駆症状なく(あるのは16%),循環症状の出現が見られる非典型例も存在する.全身麻酔下や深鎮静下では発現の発見が遅れるので注意必要.

20%脂肪乳剤(イントラリポス)を常備しておくこと.

・局麻中毒が疑われる場合の流れ

①局麻投与中止

②応援要請

③血圧・心電図・SpO2

④ルート確保

⑤気道確保,O2投与,必要に応じて挿管

⑥痙攣の治療(BZD系)

⑦採血(血中濃度測定)

重度の低血圧や不整脈を伴う場合

①脂肪乳剤投与

②蘇生

③体外循環の準備

・脂肪乳剤の投与方法(70kgの場合)

1.5mL/kg(100mL)を1分かけて投与.その後,0.25mL/kg/min(17mL/min=1,000mL/Hr)で持続投与.5分後,改善なければ,再度1.5mL/kg(100mL)をbolusし,持続を2倍の0.5mL/kg/min(2,000mL/Hr)とする.さらに5分後,1.5mL/kg(100mL)をbolus(bolusは3回まで).

循環の回復後も10分間は脂肪乳剤の投与を継続すること.

propofolの溶媒は脂肪乳剤だが,濃度10%と低く,血圧低下の方が重篤となるため,代用とはしないこと.