Origami doctor's diary

歯科麻酔学会認定医試験勉強のアウトプット用ブログです。参考とした教科書や参考書、関係のない読書本も紹介します。

歯科治療中の血管迷走神経反射に対する処置ガイドライン

総論にVVSの定義が載っており,前述の4つの分類は重要と思われる.

分類以外に試験問題として作りやすそうなところは, 

 

Q.VVRの既往のある患者で内服薬の中止を考慮する薬剤はどれか.

α遮断薬,硝酸薬,利尿薬

Q.Bezold Jarisch反射とは何か

VVRは血液の分布異常により容積が減少した心室が交感神経の興奮により過収縮,代償性に副交感神経が優位となることで生じる.

Q.頭部低位(トレンデレンブルグ体位)は推奨されるか.

されない.

・80%はさらに血圧が低下したとする報告.

・酸素運搬能は変わらないという報告

・心機能低下(実際に心不全時は起座呼吸となる)

・横隔膜挙上による呼吸機能低下

・脳血管拡張による頭蓋内圧亢進,脳浮腫の可能性

 

下記に,上記の問いに対するガイドラインの答えを抜粋.

 

 

Clinical Q1-3 内服している薬物と関連性はあるか?

α-遮断薬、硝酸薬、利尿薬は血管迷走神経反射(VVR)の誘因や失神発作を助長する可能性 がある(推奨度 B)。

日本循環器学会などによる失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版) の血管迷走神

経性失神の治療の項目には、誘因となる薬物(α-遮断薬、硝酸薬、利尿薬など)の中止・ 減量が推奨されている(レベルI)。また、α-刺激薬(ミドドリン)の投与がクラスIIa で、 プロプラノロールやメトプロロールなどのβ-遮断薬、ジソピラミドの投与がクラスIIb で 推奨されているが、これらの評価は定まっていない。

 

Clinical Q2-5 反射が生じた場合のアトロピン硫酸塩の投与は有効か?

歯科治療時に徐脈を伴う血圧低下を認めた時にはアトロピン硫酸塩を静脈投与する(推奨 度A)。徐脈を伴わない場合のアトロピンは有効とは言えない(推奨度A)

2.科学的根拠

ヘッドアップティルト試験陽性者で徐脈を伴う患者にアトロピン硫酸塩を投与すると、生 理食塩液投与に比べて症状が有意に改善した。しかし徐脈を伴わない患者では症状の改善度に有意差を認めなかった (レベルII)。ヘッドアップティルト試験で血圧低下に加えて 心房細動を生じる患者にアトロピン硫酸塩を投与したところ血圧低下と心房細動が生じな かった2) (レベルV)。嚥下失神反射を有する患者にアトロピン硫酸塩を投与しても反射は 生じなかった3) (レベルV)。歯科治療をはじめとする医療行為中に反射が生じた場合アト ロピン硫酸塩投与に加えて患者を仰臥位とし急速輸液を行うことで症状が改善したが、心 肺蘇生を行った症例もあった4-8) (レベルV)

3.解説

血管迷走神経反射は、血液の分布異状によって容積が減少した心室が交感神経の興奮によ って過収縮し、代償性に副交感神経が優位となることで生じる(Bezold-Jarisch反射)。 したがって副交感神経遮断作用を有するアトロピン硫酸塩と血管内容量を増加させる仰臥 位および輸液負荷が有効である。徐脈を伴わない場合は副交感神経の関与が小さくアトロ ピン硫酸塩は効果を示さない。

 

Clinical Q2-9 下肢の拳上、頭部低位などの体位変換は有効か?

1.推奨

仰臥位での下肢挙上は血管迷走神経反射の改善にある程度の効果は期待できる(推奨度 B)。 しかし、頭部低位(トレンデレンブルグ位)は心機能、呼吸機能、頭蓋内圧を悪化させる可 能性がある(推奨度 D)。

2.科学的根拠

血管迷走神経反射は、坐位に比べ仰臥位で有意に少ない 1)(レベルIII)。一方で、頭部低位 2)にすることで、80%で血圧が更に低下し (レベルIII)、呼吸機能低下や脳浮腫の可能性もあ2)(レベルV)。また、頭部低位により血圧はやや上昇したが、心拍出量や組織の酸素運 34)搬は変化がなかった (レベルIII)。頭部低位により全血液量の 18%が中枢に移動したに過ぎず 5)(レベルIII)、有用性は低い 5)(レベルV)。正常血圧の心疾患患者 61 名は、頭部 低位により心拍出量は軽度上昇したが、低血圧の心疾患患者 15 名は、逆に心拍出量は低下 6)した (レベルIII)。冠動脈疾患を有する18名の低血圧患者で、頭部低位と下肢挙上で比較 すると、頭部低位で動脈圧と心拍出量は有意に高値となったが、右室のストレスは上昇した 7)(レベルIII)。8 名の健康成人において、頭部低位と下肢挙上で比較したところ、両者とも 8) 左室圧、1回拍出量、心拍出量は上昇したが、その変化は10分で元に戻った (レベルIII)。

3.解説

血管迷走神経反射は坐位で起こりやすく、仰臥位は血管迷走神経反射の予防にある程度有 用と思われる。また、血管迷走神経反射が起きた場合、下肢挙上によって、血圧や心拍出量 が軽度上昇するという報告があり、血管迷走神経反射の改善にある程度の効果は期待でき ると思われる。しかしながら、頭部低位によって酸素運搬は変わらないという報告や、逆に、 心機能が低下するという報告もある。実際、心不全時には起坐呼吸になることも知られてい る。更に、横隔膜挙上による呼吸機能低下や、脳血管拡張による頭蓋内圧の亢進、脳浮腫な ども懸念されるので、仰臥位と下肢挙上にとどめ、過度な頭部低位は避けるべきである。